いくつもの「食育」に力を入れている保育園(や小学校)に訪問させていただくと、2つのタイプがある事が分かります。
それは、
- 予算を通常以上に給食や食育に割いている保育園
- 予算はもちろん食育へのエネルギーの注ぎ方が異次元な保育園
当ブログでは、タイプ2に該当する保育園に絞って紹介していきたいと思っていますが、今回紹介する「富士みのりこども園」さんは、まさに普通では考えられないくらい、食育に力を入れています。
私が訪問させていただいた時に、園長先生と栄養士さんのお話を聞かせていただき「ここまでやる保育園があるのか!」と、なんども鳥肌が立つくらいに驚きました。
今回は、そんな富士みのりこども園さんの取り組みを紹介させていただくことで、子どもがごはんを食べない悩みを解決するヒントをお伝えしていきます。
目次
食事指導の3つのポイントがあるとしたら?
「子どもがごはんを食べない悩み」を解決しようとした時に、敢えてポイントを3つに絞るとしたら以下のようになるかと思います。それは、
- 食卓でどんな言葉を掛けるか
- リラックスして食べられる環境作り
- 食事の情報密度を濃くする
これらの中では「どんな言葉を掛けるか?」というのが一番分かりやすいかと思いますし、それについては「なぜ、子供の偏食(好き嫌い)は起きる?家庭で工夫すべき7つのポイント」などの記事を読んでいただければと思います。
また、リラックスできる環境作りについても、緊張状態では食欲が湧かない体質の子がいるので、すごく大切なことになります。(参考:「食欲とリラックスの関係性」)
実際、富士みのりこども園さんでも、ランチルームの照明の明るさやテーブルの色などにも工夫があり、よりリラックスして食べられる環境が整えられていました。
ですが、今回ぜひ大切にして欲しいと思うのが「食事の情報密度を濃くする」という視点です。
たとえば簡単な例ですが、「お魚をちゃんと食べようね!」とだけ言うのか「(実際に本当かどうかはさておき)お魚を食べると頭が良くなるから食べた方がいいよ!」と言うのか。
一般的に考えると、後者の方が食べたくなると思いますが、このようにその食事に対する情報量が多くなると「食べたい!」と積極的に思うようになります。
また、これは「どれだけ食事にエネルギーが注がれているか?」と言い換える事も出来ます。
たとえばですが、「とりあえずお腹いっぱいにすれば良いでしょ」という思いで作られた食事と「子どもたちが元気に育つためには、どんな物を食べさせたら良いか?」と考えられて作られた食事では、当然出来上がるものも違いますよね。
もっと言えば「子どもたちが元気に育つためだけではなく、子どもがお家に帰ってからパパとママと楽しい会話が生まれて、その家族が明るい雰囲気になるようなきっかけを、給食で作るためにはどうすれば良いか?」くらいまで考えられて作られた食事では、当然出来上がるものはさらに違っていきます。
そして「富士みのりこども園さん」は、この「情報密度の濃さ」や「エネルギーの注ぎ方」がもの凄いレベルなのです。
ここから具体的に紹介していきます。
ここまでやる?食育目標の細分化と実行ノウハウ
富士みのりこども園さんは食育の目標として、- お腹が空くリズムのもてる子ども→園における1日の生活を通して、子どもが空腹を感じることができる。
- 食べたいもの、好きなものが増える子ども→栽培・収穫体験・お手伝いを通し、食品を身近に感じ、料理や食事に関心をもつことができる。
- 一緒に食べたい人がいる子ども→同年代の子ども・職員と食べる体験をして、他の人と一緒にいることが楽しいと思える子ども
- 食事づくり、準備にかかわる子ども→園での行事・お手伝い・調理員との関わりの中で、子ども自身が食へ興味が持てる。
- 食べものを話題にする子ども→給食を食べる中で、食事や食材について話題がのぼる生活。
実際、ここまで考えられた食育目標はそもそも少ないですし、あったとしても形骸化(ただ目標として掲げているだけ)になってしまいがちですが、富士みのりこども園さんは違います。
実は、年齢やその月によって、さらに細分化された目標や実行があるのです。
もちろん、それを達成、実行させるためのノウハウもきちんとあり、日々研究を重ねているとのことでした。
(例:離乳食の進め方)
実はこれらは富士みのりこども園さんの取り組みの中では、”ほんの一部”にしかすぎないのですが、私自身も正直これらを聞いて「ここまでやるのか!」と感動しました。
その他、3つのすごいポイント
とにかくエネルギーの注ぎ具合がもの凄い富士みのりこども園さんですが、他にも「ここまでやるのか」というポイントを3つに絞って紹介します。1.オッケーがなかなか出ない献立作り
まず、献立作りです。これほど食育に力を入れている保育園ですから、食材などは当然、無添加の物を使ったり(ハムやウインナーは無添加、ドレッシング類は全て手作りなど)、旬の物をメニューに取り入れたりなどをしています。
ですが、実は1日分の献立が出来上がるまでの間に、「栄養士さんが献立を作る→園長先生がそれをチェック」というやり取りがあるとのことですが、なかなかすぐにオッケーが出ることがなく10回以上のやり直しが行われることもあるそうです。
ここまで、考えられた献立はそれはすごいクオリティになります。
ちなみに私も訪問した際に、以下の給食をご馳走になりました。
この日は、新人の栄養士さんが作った献立との事でしたが、すごく美味しかったです。
2.栄養士さんと園児たちの交流。
そして、実際の給食の時間では、みんなで「いただきます」の前に、栄養士さんが献立を説明する時間があります。ここでは、ただ料理名が説明されるだけではなく、「どんな食材が使われていてどんな栄養が含まれているか」、「食べ方やマナーについて」などもしっかりと伝えています。
このように栄養士さんが実際に園児たちと交流する機会がある保育園さんはあまり多くないと聞きますし、富士みのりこども園さんでは、栄養士さんも学校の行事(運動会など)に参加するそうです。
それも、ただ当日だけ行事を一緒にするだけではありません。
たとえば運動会などでは、練習の段階から栄養士さんが業務の一環としてグラウンドへ行き、保育士さんと一緒に運動会を作り上げているとのことです。
「どんな人が作っているのか」が分かった方が、子どもたちにとっては安心して楽しく食べることにつながるので、もの凄く良い取り組みだと思いました。
3.計算された食器たち
他にもすごい!と感動したのは「どんな食器を使うか?」という部分も、かなり考えられているという事です。まず、富士みのりこども園さんでは、プラスチック製の食器ではなく、落としたら割れてしまう磁器製の食器を使っています。
たとえば極端ですが、美味しいお肉が紙皿の上に乗って出てくるのか、しっかりとした磁器のお皿の上に乗って出てくるのか。どちらが食べたい気持ちになるかというと、磁器のお皿ですよね。
また、食器は年齢別でも色々と工夫があります。
箸の長さなどが年齢別に違うのもすごいですが、実はスプーンの深さなども年齢などによって食べやすい深さに分けているとの事です。
これを聞いて「ここまでするのか!」と、さらに思いました。
家庭でこれらのノウハウを活かすには?
ご家庭で、これらを1から100まで取り入れる事は難しいですが、姿勢として参考になる部分があると思います。つまりそれは「食事にエネルギーを込める」という基本的な姿勢です。そうしていけば、子どもたちは自然と食に対して、ポジティブで積極的な気持ちを抱くようになります。
逆に、毎日イヤイヤでごはんを作っていれば、それも子どもたちに伝わってしまいますね。(参考:『「子供がご飯を食べないので作りたくない」という悩みは危険信号?』)
なので、まずは子どもたちにエネルギーを注げるくらい、大人自身が元気でいる事も大切となりますね。
最後に
いかがでしたか?実は、富士みのりこども園さんは「ヨコミネ式保育」を取り入れ、教育(お勉強)も体育(運動)にもすごい力を入れています。
たとえば、卒園までに基本的な読み書きや、簡単な足し算は出来るようになったり。体育も逆立ち歩きや、跳び箱を8段以上飛べるようになったりなど・・・。全ての基準が高い保育園さんです。
他にも保育園の建物自体にもかなり工夫が見られて、保育園で時間を過ごすだけで明るい気持ちになります。
これからも色々な保育園に行くことになるかと思いますが、ずっと印象に残る素晴らしい保育園だと感じました。
参考:富士みのりこども園(公式サイト)
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