無理やり禁止!給食指導で好き嫌い(偏食)や食べ残しを克服してもらう7つのポイント

給食指導について
この記事を書いている人
山口健太
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会理事長/心理カウンセラー/食事指導コンサルタント
会食恐怖症の当事者経験から、カウンセラーとして年間延べ1000人以上の相談に乗る一方で、実際に食育に力を入れている学校や保育施設に出向き、半年間で400人を超える子どもたちと交流し食事指導を研究。

また、日本全国の学校法人の管理者以上の方が購読している「週刊教育資料(教育公論社)」にて、「これからの学校給食における食事指導について」のコラム記事の連載経験があり、給食ハラスメントに関する報道について、専門家として複数回取材を受けている。

著書に『会食恐怖症を卒業するために私たちがやってきたこと(内外出版社)』などがある。

この記事では、「食べるのが苦手な子、好き嫌いが多い子、少食な子でも、食べ残しが減り安心してもりもり給食を食べられるようになる方法」についてお伝えしていきます。

世の中には「給食指導をどうすればいいか」というコンテンツが殆どない(あるいは「給食指導の手引き」などが形骸化している)ので、先生方にしてみれば「なるほど!そうだったのか!」という沢山の気づきがあると思います。

ぜひ、「どこを改善したら、もっと子供たちが楽しそうに過ごせるか?」を考えながら、以下より読んでみてください。

1.なぜ、好き嫌い(偏食)は起きるの?

まず、子供だけに限らず、「そもそもなぜ、人には食べ物に対する好き嫌い(偏食)が起きるのか?」を詳しく理解している人は殆どいないと思います。

そしていないからこそ、子供たちについ不適切な食事指導をしてしまい、「給食が嫌で不登校になってしまう」等も含めたさまざまなトラブルが起きてしまいます。

とはいえ、そもそも正しい知識を伝えている人が少ない現状ですから、それはこれまでは仕方がなかったことだと思いますし、だからこそこちらのサイトで情報発信をしていていくことで、沢山の大人や子供たちが良い方向に変わるキッカケになればと私は思いました。


さて。
前置きが長くなりましたが、

「そもそもなぜ、人には食べ物に対する好き嫌い(偏食)が起きるのか?」


これに対する答えは「食べ物」に対して「ネガティブな記憶」が結びつくと、その食べ物が嫌いになります。


ここでキーポイントとなるのは、
「ネガティブな記憶」ですが、たとえばそれは・・・

・前にピーマンを食べたときに、苦味を強く感じた。
・前にトマトを食べたときに、ぐちゃっとした食感が気持ち悪かった。
・前に生牡蠣を食べてみたら、気持ち悪くなってしまった。
・お母さんにうるさく「キノコもしっかり食べなさい!」と怒られた。
・お父さんが「インゲン豆はマズいから嫌い」ということをよく家で言っている。


…などが該当します。


ここで考えるべきことは、一般的に好き嫌いの原因として考えられている「味」や「食感」だけの問題ではないということなのです。むしろ、味覚などの問題であれば大人になればなるほど味覚は衰える(味蕾という味を感じる細胞が少なくなっていきます)ので、そのうち食べられるようになっていったりもします。

つまり、強い口調で「○○を食べなさい!」という風な食事指導をすることは、実は好き嫌いを助長することにもなりかねません。


また一方で、実際にその食材を食べなくても、記憶が書き変わりさえすれば、好き嫌いが克服できるのです。

実際にあった例として…
人参が嫌いだったうちの子が、いきなり食べるようになったんです!どうして食べたくなったの?と聞いたら、「にんじん入りのカレーを美味しそうに食べる女の子を絵本でみたから!」って言ってました!こんなこともあるんですね。
というケースもありました。

なのでもう一度言いますが、強い口調で「○○を食べなさい!」という風な食事指導をすることは、実は好き嫌いを助長することにもなりかねないのです。結果的に食べ残し等も多くなります。

2.給食指導におけるキーワードは「安心感」と「個別対応」

じゃあ、具体的にどうすれば良いのでしょうか?どうすれば子供たちが元気に楽しく(好き嫌いや食べ残しも徐々に克服していきながら)給食を食べられるようになるのでしょうか?

そこには、「安心感」と「個別対応」という2つのキーワードがポイントとなります。実際に給食指導で困った際はこの2つのキーワードを思い出してください。特に給食の場合は、個別対応といってもやることは限られていくので、「安心感」の方がより重要度が高まると思います。


ちなみになぜ、安心感が重要なのか?

それは、人の身体の仕組み上「身体が緊張すると食欲が湧かなくなる」場合があるからです。


そして、食欲というのは一般的には「お腹が空いている(空腹)状態であれば、自然と出るものだ」と考えられていますが、実は違います。

食欲が出るには2つの条件が必要で、

それが、
(1)空腹中枢の優位(空腹状態)
(2)副交感神経が優位(身体がリラックスしている状態)

という条件です。


つまり、いくらお腹が空いてしたとしても、仮に給食時の環境が緊張感が高い物であれば食欲は湧きません。


だからこそ、「子供たちが安心して給食を楽しめる環境を作る」というのを一番の主眼に置くのです。

3.克服のための具体的な7つの施策とポイント

それではここから、具体的な施策とポイントを7つお伝えしていきます。

「うちのクラスだったら、ここはもっとこうできるかも!」という風に考えながら読んでみてください。

3-1.自分が食べたい分を自分で選べるようにする工夫

まず大切なのは、「自分が食べたい分を自分で選べるようにする工夫」です。つまり、苦手なものは自分で減らしたりなど、そういった事を許可してしまうのです。

たとえば、”みんなで「いただきます」をする前に「減らしたい食べ物を減らす時間を設ける」ようにする”などです。

「個別対応が大切」という話をしましたが、アレルギー反応がある人がいるように、子供たちの味覚の感じ方や、胃袋の大きさは人それぞれです。それを考慮せずに、たとえば体の小さい子に対して、体の大きい子と同じような量を強要するのは拷問のようなものですし、もっと食べる事が嫌いになっていってしまいます。

3-2.無理やり禁止、「もう一口」禁止

それに加えて保育園などの場合、抵抗する力のない小さい子に対して、「無理ごはんを口に詰める」などは本当に愚の骨頂なのでやめてください。可哀想です。

一口だけでも食べて欲しいのであれば、その食べ物をできる限り小さくして、「この一口だけ食べてみない?」と声をかけ、「それくらいだったらたべる」という子供の意思を確認してから、食べさせてあげましょう。

それからもう一つ言うと、「一口だけ」という風な約束をして食べられた後に、「じゃあもう一口いってみよう!」なども絶対にやめてください。子供はその大人を信頼できなくなるので、次回以降も「また、そういうやり口なんでしょ」と思われ、言う事すらもだんだん聞かなくなっていきます。

これって、「今日終わったら明日休みだから仕事頑張ろう!」と言われ、頑張った後に「よし頑張ったね!実は明日休みっていってたけど、明日も仕事あるから頑張ろう!」と言われているようなものです。絶望ですよね。

3-3.完食を過剰に賞賛しない

これまで私が実際に保護者の方に相談をされてきた例として、以下のようなものがありました。
うちの子のクラスでは、班全員が給食を完食すると、その班にシールをプレゼントする風習があります。うちの子は少食なので、いつも給食の時間にプレッシャーを感じたり、周りの子から「早く食べろよ」と言われたりなどして、可哀想です。
このような形で完食をさせようとするのは、ハッキリ言って安易すぎます。

むしろ、少食などの食べる事に苦手意識がある子にとっては、地獄のような時間になってしまいます。身体も緊張して、食べるどころではなくなってしまうでしょう。

ですから、そういった完食を過剰に賞賛するルールや文化を無くした方が、食も進むし結果的に完食率も高くなるでしょう。

3-4.出来ているところを高く評価する

そしてこれがかなり大切なので、ぜひメモして欲しいのですが、それは「出来ているところに着目して、そこについて高く評価する」という心構えです。

なぜなら人というのは殆どの場合、出来ていないところを指摘されているよりも、出来ているところを評価されたほうが、気持ちが良いからです。


たとえば、A子ちゃんが苦手なにんじんスープを半分食べれたとします。

その時に、「半分しか食べてないの?」と言われた場合と、「苦手なのに半分も食べられたね!」と言われた場合。どちらが「次もまた頑張って食べよう!」と思うか?当然後者なわけです。


なので、「出来ているところを高く評価する」というのは、必ず意識してください。

3-5.食べる時間が短縮されないように意識する

また、これは食べるのが遅い子に対してはすごく大切なのですが、「食べる時間が短縮されないように意識する」というのも大切です。具体的には、学校であれば「4時間目を時間通りに終える」なども大切な意識となります。

4時間目が移動教室などで、給食の準備に取り掛かるのが遅れる場合は、給食当番は移動前にエプロン(給食着)を机に置いておくなどの工夫で、給食時間の短縮を最小限に出来ます。


また、食べるのが早い子は食べるのが遅い子にイライラして、それが逆にプレッシャーになる場合があります。

その場合は例えば、
12:40〜13:00という給食時間の場合
・12:40〜12:55までは食べ終わっても席を立たない。
・12:55を過ぎたら早く食べ終わった子は片付けはじめてもOK。
という風なルールを決めたりするのも大切です。


さらに、読者さんからこのようなメールも届きました。

「休み時間めいっぱい食べることに強制的に専念させるのは辞める」を追加してほしいと思いました。私が行っていた小学校や中学校では、私が現役だった時も、しばらくして実習で伺った時も行なっていた指導として、給食を食べられない子を、休み時間めいっぱい食べることに専念させていました。生徒本人の意思で、食べることが遅いからめいっぱい食べているのならまだ良いのですが、先生からの指導で無理矢理に休み時間めいっぱいに食べさせられている子には大変トラウマになる時間です。実際に私自身がこのような事を体験して、・食べられない自分が情けない・完食することが偉い(完食しなければ、行儀が悪い、と思われてしまう)・好き嫌いがあるわけじゃない、量を減らしてもどうしても食べられない。(少食で食べられない)・周りの目が気になる。(あの子はいつも食べられない)・友達と休み時間を楽しく過ごしたいのに、給食を食べることに専念しないといけないから、友達も離れて行ってしまう。(そんな事はないはずだが、当時はどうしてもそう思わざるを得なかった)…と思っていましたし、現に今「会食恐怖症」になってしまった一つの原因です。

当然、給食後のお昼休みまで食べさせるなども、やるべきではない指導の一つです。

給食時間が終わったら、そこで食べる時間は終了。

その方が、食べるのが苦手な子にとっても、安心して過ごすことにつながり、結果的に食べられることにもつながります。

3-6.「新しい環境に慣れる」と信じる

また、新学年になったばかり、新学期になったばかりなどの場合、環境に不慣れな事から食が進まない子が出てくるケースがあります。

その場合は焦って何か対策しようとしすぎるのは逆効果です。むしろその先生の不安が子供たちにうつり、もっと緊張感が高まってしまいます。

なので、「きっとそのうち慣れて食べられるようになる」という風に信じ、温かい目で見守ってあげましょう。

3-7.先生の嫌いな食べ物を公表する

また、これは意外な効果のある方法なのですが、「先生にも嫌いな食べ物がある(あるいは子供の時にコレが苦手だった、など)」と公表してしまうと良いです。

そうすることで苦手な食べ物が多い子供たちも、「先生も苦手ものがあるんだ!」という風に安心する事へと繋がります。

要点まとめ

いかがでしたか?

最後に本記事をまとめると、子供はもちろん人が好き嫌い(偏食)を起こすのは、「食べ物」「嫌な記憶」が結びつくからであり、無理やり食べさせるのではなく「嫌な記憶」を書き換えていく事が大切であるという事です。


そして指導に迷った時に立ち返りたいキーワードは、「安心感」「個別対応」

具体的な施策として、

・自分が食べたい分を自分で選べるようにする工夫
・無理やり禁止、「もう一口」禁止
・完食を過剰に賞賛しない
・出来ているところを高く評価する
・食べる時間が短縮されないように意識する
・「新しい環境に慣れる」と信じる
・先生の嫌いな食べ物を公表する


などがあるという話でした。


ぜひ、参考にしていただき、取り入れられるところから取り入れてみてくださいね。

家庭での工夫については、こちらをご覧ください。

なぜ、子供の偏食(好き嫌い)は起きる?家庭で工夫すべき7つのポイント

2018.06.17

 


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