「給食ですぐ吐いてしまう子どもにはどうしたらいい?」という保育園からの相談。

子供がごはんを食べない
この記事を書いている人
山口健太
食べない子専門の食育カウンセラー

「人前での食事ができない」という会食恐怖症の当事者経験から、カウンセラーとして年間延べ1000人以上の相談に乗る一方で、実際に食育に力を入れている学校や保育施設に出向き、500人を超える子どもたちと交流し「食べない子への食べさせ方」を研究。

多くの食育に悩む保護者や教育者から相談が届くようになる。著書に『食べない子が変わる魔法の言葉(辰巳出版)』などがある。

先日、とある岩手県の保育園さんから「給食ですぐ吐いてしまう子がいるのですが、どうしたら良いですか?」と相談を受けました。

「吐く」というのは何かしらの拒絶のサインであり、「食べて!」と言うだけでは良くならず何かを変える必要があります。

今回はその質問に回答する形で、「すぐ吐いてしまう子にはどうしたら良いか?」という悩み解決のヒントを書いていきます。
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保育園さんからの相談内容

今回の相談対象となる子の要点をまとめると、以下のようになりました。
・給食のときにすぐに吐いてしまう子がいる、2歳頃からはじまり、現在は4歳。
・食べさせようとしてもオエッと口の外に出したり、咳き込んで口に食事を入れる事ができない。
・1口食べるのに1時間以上かかる日もあるが、そうかと思えば、普通に食べられる日もたまにある。
・給食は食べないのに、おやつの時間は普通に笑顔で食べることが殆ど
そして、よくよく担任の先生の話を聞いていると「(別の先生が)3歳くらいの時に時間が無くて、無理やり口に詰めて食べさせた事がある」という事も言っていました。

これを踏まえた上で、本題へ入っていきます。

なぜ、吐いてしまうのか?

そもそも吐き気というものは、不快な感情に耐えられなくなった時に、脳幹の嘔吐中枢を刺激される事によって起きます。これは簡単に言うと「何か嫌な事に対する拒絶反応として吐き気が出る」という事です。


また、脳には「条件付け」といわれるプログラムがあります。

よくこの例えで出てくるのは「パブロフの犬」ですね。


これは、
  • 犬に餌を与えるときに呼びベルを鳴らしてから与える
  • これを餌を与えるたびに毎回毎回繰り返してやる
  • そうするとベルを鳴らすだけで犬はよだれを出すようになる

というものです。


つまり、

本来:エサ(要因)→よだれが出る(反応)

条件付け中:呼びベル(要因)→エサ(要因)→よだれが出る(反応)

条件付け後:呼びベル(要因)→よだれが出る(反応)


という事が可能になるということです。


これは給食などでも言えて、

本来:食事(要因)→食欲が出る(反応)

条件付け中:食事(要因)→無理やり食べさせる(要因)→拒絶(反応)

条件付け後:食事→拒絶(反応)


という事も当然起こり得るということです。


特に、自閉傾向のある子などは、この条件付けのプログラムが起こりやすい事も分かっています。(実際、自閉傾向のある子が給食に悩む事はすごく多いです。)

状態が悪いと人は、過食か拒食のどちらかに走る

また、人というのは状態が悪いと「過食」をするか「拒食」になるかのどちらかとなります。

ストレスでいっぱい食べてしまう人がいれば、ストレスで食欲が出ない人の両方がいるのはあなたもイメージしやすいと思います。

つまり、その相談対象となった子は「拒食タイプ」の子なわけです。拒食傾向のある子は「食パンタイプ」の子に多く、華奢な体つきである事が多いです。(参考記事:食べるのが遅い子どもにはどう対応すべきか?【4つのタイプ分け】


じゃあ、なぜおやつの時間は楽しそうに食べるのか?

これは、いろいろな観点から解説できるのですが、ここでは一つ言っておくと、子どもにとって「おやつ」というのはポジティブな条件付けがしやすいのです。

「おやつの時間よ〜」とお母さんが言えば、子どもたちがテンションが上がる様子が目に浮かびますよね。

つまり、食事というのは、食べるから楽しいのではなく、楽しいからいっぱい食べるものなのです。


そしてこれは何でもそうですね。大人が子どもの気分が良い状態を作ってあげるからこそ、子どもたちは真っ直ぐスクスクと成長していくのです。

どのように解決が出来たか?

そんなすぐ吐いてしまう子でしたが、ここ最近は調子が良くてよく食べるようになってきたとの事です。


じゃあ、何を変えたかというと「席を変えた事」が功を奏したようです。

つまり、その子にとって楽しく過ごせる友達と、一緒のテーブルでごはんを食べるようにしたのです。

これは「ほんとにすごい!さくらしんまち保育園の給食指導!」でも書いていることですが、なかなか着眼しづらいですが、すごく効果のある事でもあります。

好き嫌い克服の座席の工夫
(※好き嫌いを克服しやすくする、座席配置の例)


他にもとにかく「この子が安心して食べられるように」とか「(仮に食べなくても)楽しんでもらえるように」など、そういった事を一番に考えていたら、必ずその子は自分から食べる意欲が出てきます。

そして、子どもとはいえど自分の意思で決めた事は、最後までやり遂げるものです。(※そこに大人の誘導が少しでも入った時点で、うまくいきません。)


食べた事を過剰に褒めたりする必要はないし、そもそも大人の第一優先の感情は「食べなくて心配」ですが、食べない子どもの本心は「食べたくない事すら受け入れてほしい」なのです。

そしてそれ受け入れられると、安心感が満たされてようやく「食べてみようかな」という気持ちになります。


また、子どもというものは、そもそも不安定なものですから、一喜一憂していてはこちらの体力・気力が持ちません。食べても喜びすぎず、食べなくても悲しまず、長い目でみてあげる事と、必ず良くなると信じる気持ちが大切になります。

最後に

いかがでしたか?

要点を一言でまとめると「その子にとって居心地の良い安心した環境を整える事」です。具体的に安心感を育む方法については「無理やり禁止!給食指導で好き嫌い(偏食)や食べ残しを克服してもらう7つのポイント」を参照してください。


そしてこれは「食卓に向かう前(普段の関係性)」から始まっていることでもありますので、(言われなくても分かっている事だと思いますが)普段から子どもたちにとって安心できる関係が築けているかも大切にしてください。


また、保育園だけで「子どもが食べない問題」を解決しようとするよりも、できれば保護者(親)と連携したいところですが、そのコミュニケーションが難しいと悩む先生も多いです。

そういう時はまずは、親としての苦労を理解してあげた上で、問題を指摘するのではなく、工夫を提案してみてください。

たとえば「こんな感じで食べないんですよ!!!」と言われても親は聞きたくないので「こういう風にしたみたら食べるかもしれませんね〜」というような形でコミュニケーションをとってみるなどです。

ぜひ、参考にしてみてください。

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