給食における「黙食(私語禁止)」指導は愚策か?

給食指導について
この記事を書いている人
山口健太
食べない子専門の食育カウンセラー

「人前での食事ができない」という会食恐怖症の当事者経験から、カウンセラーとして年間延べ1000人以上の相談に乗る一方で、実際に食育に力を入れている学校や保育施設に出向き、500人を超える子どもたちと交流し「食べない子への食べさせ方」を研究。

多くの食育に悩む保護者や教育者から相談が届くようになる。著書に『会食恐怖症を卒業するために私たちがやってきたこと(内外出版社)』などがある。

今日は久々に、給食指導についての記事を書きたいと思います。

最近よく聞かれる質問に「給食中に私語禁止はどうなのか?」というものがあります。

これらは「黙食」「もぐもぐタイム」などと言われており、ときたま小学校で見かける給食指導で。


なので今回はこのテーマについて、

  • なぜ、そのような指導が行われているのか?
  • 実施するメリットとデメリット
  • 実際に届いた相談者の事例
  • 愚策だと私が思う理由と解決策
  • 実施する際は目的を再定義する
など、お伝えしていきたいと思います。

「黙食(もぐもぐタイム)」とは?そのメリット&デメリット

この「給食中に私語禁止」というのは、「黙食」や「もぐもぐタイム」と言われていて、小学校の給食指導でたまに行われています。

よくあるやり方は、給食の時間が20分として、
  1. 「いただきます」から10分間は私語禁止
  2. 「ごちそうさま」の前の10分間は私語禁止
という2パターンです。(変形型もありますが、それは本文後半にて紹介します。)

普通の感覚からすると「えっ、給食中に私語禁止って…怖くない?」と感じると思いますが、こうする事で「おしゃべりのしすぎて食べる時間が足りなくなっちゃった」という子の給食の食べ残しが減る(完食率が上がる)のです。


一方で、大きなデメリットもあります。


それは「給食時間が楽しくない」と感じる子も多いという事です。

実際に、ちょうど昨日あった保護者の方からの相談で「子どもが給食時間に喋れないと楽しくないから美味しくないと言っている」という類のものがありました。


ここで中には、「楽しくなくても、残飯が減るなら良しなのでは?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、そこには多くの人が知らない事実があります。

楽しくないと食欲が湧かない子の存在

「子ども」と一口に言っても色々なタイプの子がいますが、胃袋にも色々なタイプがあります。

私はそれを
  1. フードファイタータイプの胃袋
  2. 神経質タイプの胃袋
という大きく2つに分けています。(これは大人も同様です。)

ちなみにこれは整体の理論と、たくさんの「食べられない子」の相談に乗ってきた経験を元に私が分かりやすく纏めたものです。


詳しくは「こちらの記事」に書いていますので読んでほしいですが、安心感があったり、リラックスしていたり、楽しいという環境でないと、食欲が湧かない子がいるのです。

(逆を言えばそれは、シーンとしていたり、全部食べなきゃという空気だと、それがプレッシャーとなり食欲が湧かなくなる子になります。)

その子の大体の特徴は、
  • 肌はどちらかというと色白
  • 全体的にしゅっとしている(特に肩、鎖骨、首などのラインが細い)
  • 性格的には控えめ
  • 謙虚で欲張らない
  • 気配り上手
  • 本音を言うのが難しい
  • 追い詰められると涙ぐむ(”ワーン泣き”ではなく”ぐすん泣き”)
という感じです。(※あくまで大体の特徴です)

なので、その子たちにとっては「黙食(もぐもぐタイム)」というのは、食欲が湧かない環境であり「逆効果」なのです。

このような相談事例も・・・

また、中には「黙食(もぐもぐタイム)」指導によって、これから紹介するひどい相談事例もありました。

相談者(保護者)さんのプライバシーを考慮したうえでご紹介すると、
  1. もともとうちの子は給食が大好きでしたが、今の担任のクラスで黙食が行われています。
  2. そうすると黙食時間に担任の先生が早く食べた子に対しておかわりを勝手に装うように。
  3. 私語禁止なので「やめて」とも言えない空気で、それが原因で給食が嫌いに不登校に。
  4. その担任の先生は「うちのクラスは完食率が高い」と他の先生に自慢している…。

というようなケースです。

もちろん、残飯が少ないにこしたことはありませんが、このような犠牲を生んでまで完食率を高める必要はあるのでしょうか?

「食事は楽しい」という前提があった上での、いっぱい食べようなのではないでしょうか?

あなたはこれを見て、どのように思いますか?

じゃあ、どうすればクラスの残飯は減るのか?

とはいっても、既に「黙食(もぐもぐタイム)」を実施されている現場の先生からすると「じゃあどうすれば良いのか?」と、路頭に迷うと思います。

そこで給食指導のヒントをお伝えすると、まず強制して食べさせるなどはもってのほかなので、子どもたちの「食べたい意思」はあるのかを確認しましょう。

苦手なものも”強制”ではなく「1個だけでも食べてみたら?」などの”提案”にとどめておくべきです。給食を残さないクラスの先生はそれが抜群にうまいのです。


また、居残り給食などは、長い目で見ると「給食」と「嫌な記憶」が結びつくのでデメリットしかありません。

居残り給食を撤廃することで、普段から食べられる子にとっては「時間がないと下げられちゃうから食べなければ!」となるし、食べるのが苦手な子にとっては「居残りさせられる心配がなくて安心する」ので、そういった安心感の生まれる環境では食欲が湧きやすくなります。

その他、詳しい具体的な給食指導のノウハウについては『居残りなし、強要なしでクラスの残飯がゼロになる給食指導の技術(E-book)』や「無理やり禁止!給食指導で好き嫌い(偏食)や食べ残しを克服してもらう7つのポイント」など他のコンテンツを参照にしていただければ幸いです。

「黙食」の実施の目的を再定義しよう

また、現時点で既に「黙食」指導を取り入れているという場合でも、その実施の目的を再定義するだけでもだいぶ違います。

仮に現時点の目的が、「おしゃべりを少なくする事で、完食率を上げるため」だったとしたら、それは神経質タイプの胃袋を持つ子にはマイナスです。

なので、たとえば「食材をしっかりと味わってみましょう」という目的に再定義するのです。そのような目的であれば、たくさん食べるのが苦手な子にも、あまりプレッシャーにはなりません。


また、毎日忙しい中で時間的には難しいかもしれませんが「今日の給食のメニューはどんな味がしたか?」を振り返る機会をたまに設けても良いと思います。実際、人というのは「味わって食べよう」と思えば、自然とおしゃべりが少なくなるんですね。


他にもたとえば、給食時間に放送が流れる場合は「放送中はしっかり放送を聞くためにおしゃべりを慎む」という変形型の黙食もあります。それも一つのアイディアとしてはありかと思います。


色々とお伝えしましたが、私はたくさんの人が「食事は楽しい」と自然に思えるようにと思っています。

そして、子どもの頃の給食時間などは、その後の人生における食事時間のイメージ形成にもなります。

世の中に少しでも、(先生にとっても子どもにとっても)楽しい給食時間が増えれば良いと思うし、それが結果的にクラスの残飯が減る事にも繋がるのです。

まとめ

いかがでしたか?

色々お伝えしましたが、理想は子どもたちそれぞれに合わせた対応をする事です。


ですが、先生も毎日忙しく、給食だけにエネルギーを注ぐわけにもいきません。

なので、少しでも取り入れやすいところから、子どもたちが食事を楽しめるようになる工夫を取り入れて貰えれば幸いです。


それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。

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