2017年9月に「岐阜市の市立小学校で、50代の女性教諭が生徒に給食を残さず食べるよう指導し、生徒計5人が嘔吐していた」・・・というニュースがあり、世間を賑わせましたね。
それ以降、私のところにも「給食が嫌だと言って、学校に行きたがらない」という保護者からの相談や、「どのように給食指導をすべきなのか」などに悩む先生方からの真剣な悩み相談が増加していおり、なんとか力になりたいと感じています。
私が取材を受けたこちらの「完食を強要する給食ハラスメント 会食恐怖症につながる可能性も」という記事では、Twitter上でも5000以上のRTがあったりなど、世間的にも注目が高まっている話題なのかもしれません。
そこでまずハッキリお伝えすると「給食を残すな!」などと子供たちに怒ったりする事は、殆どが逆効果です。
それがなぜなのか?
こちらの記事では、それについて解説すると共に「残すな!」等と言わずとも、子供たちがごはんをモリモリ食べられるようになるヒントをお伝えしていきたいと思います。
1.残すな!と怒られるとますます食べられなくなる理由
いきなり本題へといきましょう。なぜ、「残すな!」などの指導が逆効果なのか?
それは、人の身体の仕組み上「身体が緊張すると食欲が湧かなくなる」場合があるからです。
そして、食欲というのは一般的には「お腹が空いている(空腹)状態であれば、自然と出るものだ」と考えられていますが、実は違います。
食欲が出るには2つの条件が必要で、
それが、
(1)空腹中枢の優位(空腹状態)
(2)副交感神経が優位(身体がリラックスしている状態)
という条件です。
たとえばあなたにも、”「この後、大切なプレゼンがある!」などの緊張レベルが高い時に、ご飯を食べようと思ってもなかなか喉を通らなかった”という経験があるかもしれません。
これは空腹であっても、身体がリラックスできていないという最たる例となります。
そして、たとえば給食において「残すさず、全部食べなさい!」と強く言われ怒られたりすると、そのネガティブな経験が記憶されて、次回の同じようなケースでも「また、同じような嫌な体験をするのではないか?」という風な考えが自動的に浮かび上がるようになります。
そうすると、より不安になったり、緊張状態は高まりますよね?
だからもっと、体が緊張して食欲は湧かなくなるし、更にそうすると「この不安や緊張をどうにかしなければいけない!」という風に、注意(意識)がより自分に向くようにもなります。
しかし残念ながら、眠れない夜に「早く寝なければ!」と思えば思うほど目がさめるように、「この不安をどうにかしなければ!」と思えば思うほど、より不安や緊張レベルが高くなってしまうのです。
そして、それが度を超えると、ウルトラマンがピンチの際にカラータイマーが鳴るような感じで、”身体の危険信号”として何かしらの症状が出るケースもあります。
具体的には、吐き気、嚥下障害(喉に蓋がされて飲み込めないような感覚)、動悸、発汗、震え、パニック発作などの症状です。
これが、「残すな!」と怒る事が逆効果たる理由となります。
2.給食が原因で会食恐怖症になる人も?
私は、(一社)日本会食恐怖症克服支援協会の理事長として、「会食恐怖症」に悩む方々の支援もしています。ちなみに会食恐怖症は、社交不安症という精神疾患の1つの症例とされていて、社交不安症というのは「社交機会において強い不安を覚え、の不安を避けようとしたりすることで、本来あるべき健全な社会生活が脅かされる精神疾患」という定義が一般的です。
ちなみに「恐怖症」というと「高所恐怖症」のような、比較的ライトなイメージを抱く方も多いかもしれないが、実情は全く違います。
実際は「会食不能症」と表現した方が分かりやすいかもしれないほど、人前での食事が出来ません。
具体的に言うと、会食場面にて不安と緊張が高まり、先ほど症状として挙げたように、吐き気、嚥下障害(食べ物がうまく飲み込めなくなる)、めまい、顔面蒼白、震え、発汗、パニック発作などが起きてしまい、ご飯を食べるどころではなくなるのです。
実際のところ、会食恐怖症となる原因にはさまざまな要素があります。それはたとえば、生育環境、遺伝的要因、ストレスなど、さまざまな要素が絡み合っているのです。ただひとつ言えるのは「きっかけ」として、何かしらで「会食においての恐怖を学習する機会」があったケースが多いということです。
そして、当事者の方の支援をしていると、きっかけとして挙げられるのは保育園や学校での給食などの教育現場での体験である事がかなり多く、体感値ではあるが割合としては6割前後かと思います。
つまり、半分以上が学校給食などの教育現場での出来事をきっかけにして、会食恐怖症になってしまうということです。私自身も過去に会食恐怖症で悩んでいたのですが、大きなきっかけは高校の部活動の合宿でした。
また、私のところには、学校給食に悩むお子さんをお持ちの親御さんからの相談も沢山届きます。
もちろん、学校だけが全ての原因ではなく、親御さんの教育に改善点がある事も多いのですが(というか改善点が無いというケースは殆どないのですが)、少しでも笑顔で給食を食べられる子供たちが増えれば良いなと思っています。
3.食事指導にはたくさんのコツがある
とはいえ私は、この問題において、教育者(学校や保育園の先生方)を一方的に責めるのは筋違いだと思っています。なぜなら、先生方も一生懸命お仕事をしているのには変わりないし、過剰な完食指導をしてしまうのも、「命の恵みを大切にしよう」という価値観に基づいたものだと思うし、そもそも自分が子供の時から大人たちにそう言われてきて育ってきたからです。
しかし一方で、「食事指導」というコンテンツについては、まだまだ改善の余地はあると思います。
なぜなら「食事指導」には、多くの人が知らないたくさんのコツがあるからです。
それについては、他の記事でたくさん丁寧にお伝えしていこうと思いますが、ひとつ言えば「残しても大丈夫だからね」という事を言うと、「子供たちはもっと食べられるようになる」という事実があります。
つまりこれは、(特に少食の子や、食べる事に苦手意識がある子にとっては)
・「残さず食べよう」と言うと、緊張して(食べたいのに)食べられなくなる
・「残しても大丈夫だからね」と言うと、緊張がほぐれ食べられるようになる
という事です。
このように言葉掛け一つ変える事で、子供たちは元気に食べられるようになるという事でもあります。
だから私は、このサイトを通じて色々と情報発信をしていく事を通して、たくさんの教育者、保護者、子供たちが笑顔になっていけば良いなと思っています。
要点まとめ
最後にこの記事の要点をまとめると、・「残すな!」指導は逆効果
・食欲にはリラックスが大切
・言葉掛け一つ変えるだけで子供たちに笑顔は戻る
という感じです。
ぜひ、参考にしてみてくださいね。
具体的な手法やコツはこちらをご覧ください。